日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 第2予選会1日目 トッパンホールに参上。
トッパンホールに向かう時は、ホールの裏にある公園側から迂回をして入館する。
途中で立ち寄る公園には様々なオブジェが設置されているのだが、本日は面白い光景を目の当たりにした。
そのひとつ、ゴリラさんの頭の上に何やら妙な物が置かれている。よく見ると子供の帽子が置かれているではないか。
帽子の落とし主が見つけやすいように、通りすがりと思しき人の配慮が伺える。
筆者は関心を示したので、ゴリラさんに近づいてお声がけをしてみる。
筆者 「お取込み中、失礼いたします。」
ゴリラ「何だい?」
筆者 「その帽子、似合いますね。落とし物ですか?」
ゴリラ「そうだよ。昨夜、子供が落として行ったんだ。」
筆者 「そうなんですか…。それで通りすがりの人が拾って、落とし主が判りやすいようにゴリラさんの頭に被せたのですか?」
ゴリラ「…」
筆者 「この辺は良心てきな人がお住まいなのですね。」
ゴリラ「違うよ。暗闇なんだから帽子が落ちていたって気がつかないよ。」
筆者 「それでは何故ゴリラさんの上に帽子が被せてあるのですか?」
ゴリラ「オイラが被ったんだ。」
筆者 「…」
筆者 「ゴリラさんは動けるのですか?」
ゴリラ「ここだけの話だけど、新月の夜は真っ暗闇になるだろ、その夜だけ動けるんだ。」
筆者 「そうなんですか、神秘的ですね。(^^;)」
ゴリラ「そうだろ、あれだよ。こないだなんか神楽坂で明け方まで飲んでて、夜が明けたら動けなくなっちゃったんだ。」
筆者 「それで、どうされたのですか?」
ゴリラ「公園のゴリラが無くなったって大騒ぎになったらしい。」
筆者 「そうでしょうね。それで…」
ゴリラ「区に神楽坂商店会から連絡があったらしいよ…。坂の途中に顔を赤くしたゴリラのオブジェが置かれているって…」
筆者 「ゴリラさんは大変な思いをしましたね。」
「それで、先程のゴリラさんが帽子を被った理由は、落とし主が判りやすいようにとのお気遣いですね。」
ゴリラ「そうだよ。おかしいかい…」
筆者 「いいえ。賢明なご判断です。」
ゴリラ「ところで、アンタはどこへ行くんだい。」
筆者 「音楽コンクールの聴講に伺って、夕方まで座席に根を張る所存です。」
ゴリラ「オイラもここで根を張っているよ。 石の上にも三年って言うだろ…」
筆者 「三年どころか、公園の竣工時から根を張っているに思われます。」
ゴリラ「宿命だよ。運命は変えられるけど宿命は変えられない。宿根草ってとこかな…」
筆者 「…」
ゴリラ「音楽家は、何でコンクールに出たいと思うんだい?」
筆者 「音楽家としての価値観を高める目的が第一点で、その為に日々の研鑽を積んだ結果を成果として築きたいとでも申しましょうか?」
ゴリラ「それは抽象的な考えでしょ…。具体的には? それと第一点があるなら、第二点は何?」
筆者 「…」
ゴリラ「第二点は何? それと結果と成果を併記したら整合性が取れないでしょ」
筆者 「失礼いたしました。」
ゴリラ「それでは、成果として築くには何か必要なの?」
筆者 「鍛錬です。」
ゴリラ「まだ若いね?」
筆者 「…」
ゴリラ「演奏行為って何だか判るかい?」
筆者 「音楽を奏するとでも申しましょうか…」
ゴリラ「…」
ゴリラ「演奏行為は五感を適応行動させたもの…」